瀬戸臨海実験所公式ブログ ‐ 地球の海と生命を科学する人々の日常。

Nov 30, 2017

祝! 戸川優弥子さん 学会賞受賞


2017(平成29)年0827日に、岡山大学で開催された国際シンポジウムにおいて、瀬戸臨海実験所で研究されている、理学研究科生物科学専攻 修士2年の戸川 優弥子氏および中野 智之助教が優秀発表賞を受賞しました。

Ms. Yumiko Togawa(Master of Graduate School of Science) and Dr. Tomoyuki Nakano(Assistant Professor) were awarded the Award for Exploratory Molluscan Research at International Symposium ‘Multidisciplinary Explorations into molluscan diversity and evolution held at Okayama University on August 27, 2017.

おめでとうございます。

The Cryptic Diversity in Aplysia parvula.”
Yumiko Togawa, Rie Nakano, Tomoyuki Nakano.

Summary/研究紹介>
Aplysia parvula is a small-sized species in the group of sea hare. The species is known to have a cosmopolitan distribution. The color of their body, tentacles, foot, tale and white spots are extremely variable. The molecular analyses clearly show that several species are concealed under the name Aplysia parvula.

 アメフラシは巻貝の一種であるが貝殻が退化しており、他の貝類とは違い貝殻の形態で種を同定することが困難である。そのため、軟体部の色や模様で同定されることが多いが、軟体部の色は生息する環境によって変化する。本研究で用いたクロヘリアメフラシは色彩変異が非常に多様なことで知られているが、分子系統解析の結果、この種は単一種ではなく、複数種によって構成されていることが明らかになった。

Nov 28, 2017

祝! 中山凌君、学生優秀発表賞(口頭発表)受賞

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2017(平成29)年9月5日に、滋賀県立大学で開催された2017年日本プランクトン学会・日本ベントス学会・合同大会において、瀬戸臨海実験所で研究をされている、理学研究科生物科学専攻 博士後期課程3年の中山 凌氏および中野 智之助教が学生優秀発表賞(口頭発表)を受賞しました。

おめでとうございます。
指導にあたられた中野先生、ご苦労さまでした。

対象となった発表内容は以下の通りです。
「カサガイ類に見られる浮遊幼生の着底基質の選択性について」
中山 凌・中野 智之

(研究内容の紹介)
 カサガイの1種であるコモレビコガモガイは、幼貝の頃に他の巻貝に付着するという、カサガイ類の中でユニークな生態をもっています。しかし、巻貝への付着が生活史のどの段階で行われているのかについては、これまで明らかにされていませんでした。本研究では、生活史の初期段階である浮遊幼生期に基質の選択が行われていると仮定し、様々な基質を用いた着底選択実験を行いました。その結果、コモレビコガモガイの浮遊幼生はホストの巻貝由来の粘液を塗布した基質に最も多く着底することが判明しました。このことより、コモレビコガモガイは浮遊幼生期に、巻貝の殻の上に選択的に着底するという事が分かりました。

  

Nov 27, 2017

祝! 安岡法子さん 論文出版!

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瀬戸臨海実験所は平成28年度より教育関係共同利用拠点(事業名:黒潮海域における海洋生物の自然史科学に関するフィールド教育共同利用拠点)第2期として文部科学省から認定され、各種共同利用事業を進めています。 この教育拠点共同研究員として、当実験所をフィールドワークの拠点として活用されている安岡法子さん(奈良女子大学大学院)が、論文を出版されました。

Yasuoka N, Yusa Y (2017) Effects of a crustacean parasite and hyperparasite on the Japanese spiny oyster Saccostrea kegaki, Marine Biology, Springer, 164:217.

https://link.springer.com/article/10.1007/s00227-017-3250-6

ケガキに寄生するクロピンノという種類のカクレガニにさらに寄生するヤドリムシ(エビヤドリムシ科の等脚類)の論文です。

おめでとうございます!

以下は安岡さんによる解説です。
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この研究は、和歌山県白浜町で行ったもので、対象としたヤドリムシも過去に瀬戸臨海実験所の教員であった椎野先生が白浜で記載された種です。ということで、とても白浜に縁のある研究です。実験所の目の前にある番所崎がサンプリング地点です。

クロピンノのメスは基本的に牡蠣の中にいて、オスは自由生活をしています。オスのカニは牡蠣を出入りしなきゃいけないので、メスよりも小さくて泳げるように歩脚に遊泳毛を持っています。
ところが、ヤドリムシに寄生されると、オスのカニがメスのように巨大化してしまい、遊泳毛がなくなり、牡蠣の中に閉じ込められてしまうようです。
閉じ込められたオスのカニは、普通のカニと同様に牡蠣の繁殖や身入りに悪影響を与えます。
ヤドリムシはカニの寄生率を上昇させて、牡蠣への悪影響を増やす効果がある、といえます。
このように、寄生者にさらに寄生する生き物を超寄生者といい、超寄生が寄生者を通して宿主に間接的に影響を与えることは今までも知られていました。敵の敵は味方、という考え方で、従来、超寄生者は寄生者を通して宿主に正の影響を与えると言われてきました。今回の研究は、超寄生が間接的に負の影響を宿主に与えうる、と海洋生態系において初めて示したものです!敵の敵は味方とは限らない、ということですね。



牡蠣の研究を始めた学部4年生の時に、ケガキにクロピンノが入ってることを見つけ、修士に入って、クロピンノに何かついてる?!とヤドリムシを見つけ、オスの形が変わってる?!大発見!(と思ったら他のカクレガニでそういう論文は既に出ていました...)....と、ちまちまと研究を続けた結果、無事に論文になりました。

クロピンノについて色々と教えてくれた和田恵次先生(現・いであ)、ヤドリムシについて色々と教えてくれた伊谷行先生(高知大学)、瀬戸臨海実験所の皆様、その他たくさんの人にお世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。



Nov 18, 2017

京大臨海実習第3部・公開臨海実習「藻類と海浜植物の系統と進化」(20170314-19)その2

posted by TPS

3/14-19の日程で行われた,京大理学部「臨海実習第3部」・公開臨海実習「藻類と海浜植物の系統と進化」のその2です.内容が濃すぎるので2つに分けちゃいました.

 さて,タイドプール調査の発表は4日目の朝に行われました.8時に集合して即発表会です.こちらの班は大きさと海面からの距離が異なるタイドプールを比較しました.

もう一方の班は,深さや標高の違うタイドプールを比較したようです.異なるファクターが多くなればなるほど,考察は複雑になりますよ.


発表の後は参加者全員で熱い議論を交わしました.2つの班で共通にみられる傾向やその原因,または異なる傾向と要因は何でしょう?

今回のタイドプール調査の成果です.なかなか細かい点まで考察されています.

この日の実習は盛りだくさんです.朝の発表を終えてすぐに畠島へ渡り,海草と海浜植物の観察を行いました.写真は京大所有の実習船ゾエアです.

畠島は当実験所が管理する無人島で,研究・教育目的のために海岸生物の保護を行っています(詳細はHPを参照).臨海実習では主に磯観察を行っていますが,海浜植物も豊富なのです.

京大理学部の田村先生と布施先生による解説を受けながら,島内の海浜植物を観察していきます.

葉や花びらの色・数・形状はもちろん,時には匂いなども大事な特徴の一つです.

気になる植物は実験所に持ち帰り同定します.採集の際には植物の特徴(花や果実がついてるとなお良い)を漏らさないように気を付けます.草本なら根から堀りおこし,木本なら枝先40cmを切りとることもあります.


今回の実習は盛りだくさんです.お昼には畠島から引き揚げ,午後からは番所崎のタイドプールで海藻のライン調査を行いました.本当は畠島でやりたかったんですけどね.

10mのライン上を1m間隔で10地点に区切り,50㎝四方のコドラート内の藻類(と動物)の被度を調査していきます.一番端は海中になってしまうので,箱メガネを使って調べます.

ちなみに中はこのように見えていますよ.この状態からどんな種類の海藻がどのくらいの面積を占めているか調べていくのです.

実験所に戻ってから,データをまとめて発表の準備にとりかかります.

発表は夜になってからでしたが,疲れも見せずステキな発表をしてくれました.

ライン調査の成果がこの黒板です.とても充実した4日目がこれで終了です.

5日目も朝早くからのスタートでした.まずは昨日採集した海浜植物の標本作成です.

葉は表と裏が見えてかつ重ならないように,大きな植物は折り曲げて新聞紙で挟みます.これを重ねて重しを置いて乾燥させていきます.

この日は実験所構内と近くの番所山公園で海浜植物の観察を行いました.海に囲まれた瀬戸臨海実験所では,至る所で海浜植物がみられます.

実験所の周辺にはハマダイコンという野生の大根も群生しています.とにかく固くて辛いんですが,食べることはできます.このあとハマダイコンがあんなことになるなんて...

採集した植物は標本にします.もう手慣れた感じですね.

午後からは班ごとに自由課題に取り組んでもらいました.こちらの班は習ったばかりのライン調査を応用して,番所山公園の南北斜面の植生比較を行いました.

写真ではわかりにくいかもしれませんが,結構な勾配がありました.

そしてこちらの班は,砂浜のハマダイコンと実験所周辺のハマダイコンを収穫(?)しまくり,土壌の違いによる成長への影響を比較しました.そして意外なところにも影響が...

実は収穫の様子を見た観光客(特にお子様)が,「こんなところに大根が!」と喜んでしまい一斉に掘り出してしまいました.砂浜にいる人たちの手には大根.未曾有の大根ブームとなりました.

最終的にはこんなに収穫できました.

夕方の発表会までにデータをまとめなくてはなりません.3人集まればなんとかなる...はずです.

短時間の調査と発表準備にもかかわらず,とても面白い結果が得られていました.これで実習メニューは終了です.



夜は打ち上げパーティです.毎日の濃密なスケジュールをみなさん無事にこなしてくれました.

実習中に作成した海藻標本をお土産に全日程が終了です.お疲れ様でした!
そして来年3月の受講を考えている皆様,おもしろいですよ.是非白浜へ.

Nov 17, 2017

京大臨海実習第3部・公開臨海実習「藻類と海浜植物の系統と進化」(20170314-19)その1

posted by TPS

既に夏が終わり,季節はすっかり秋になってしまいましたが,せとブロは今年の3月に行われた実習について投稿していきます.遅くなってごめんなさい.そろそろ来年3月の実習への参加募集が始まります.この記事が参考になりますように.

3/14-19の日程で,京大理学部「臨海実習第3部」・公開臨海実習「藻類と海浜植物の系統と進化」が行われました.例年は受講者が多いこの実習ですが,今年は6人のみで実施しました.

初日はオリエンテーションとして,自己紹介からスタートです.6人しかいないので,1人あたりちょっと長めの紹介をしてもらいました.

自己紹介の後は所内の見学です.写真の角度が良かったのか,とっても広くてキレイな廊下に見えますね.いや,実際広くてキレイですヨ.

この実習を担当してくださる福井県大の神谷先生から,海藻についての基本的な講義を受けて初日は終了です.これくらいの規模の講義も,距離が近くていいですね.

2日目は藻類の世代交代についての講義からスタートです.海藻の多くは、染色体数が半分になる配偶体と2倍体になる胞子体の間で世代交代を行います.

前日に採集しておいたアオサから何やら緑色の靄が出てきました.それを顕微鏡で観察してみましょう.

ガラスボールの縁にたまった緑色の部分です.それを拡大すると右の写真のようになります.これは遊走子といって鞭毛をつかって泳ぐことができます.遊走子が岩場や網に着底すると,新しいアオサへと成長していきます.

次に藻類の切片を作っていきます.神谷先生の熟練の技をご覧ください.


実習生もキレイな切片を作るべく,何度もチャレンジしていました.もちろん観察とスケッチも必要です.

うまくいくと,こんな切片が観察できます.1層の細胞が見事に観察できました.1層ということは...,そう,アレですね.是非実習で体験してください(宣伝).

午後からは海岸で実物を採集・観察しました.実験所の眼前には,干潮時になると広大なタイドプールが出現します.

足下には,このような色とりどりの海藻が繁茂していました.左はハナフノリとフクロフノリ,右はカゴメノリとみなさんおなじみのヒジキです.

ところでみんなが厚手のカッパを着込んでいることに気づきましたか?そうです,この日は気温が低いうえに風が強く,雨も降りだす始末です.野外採集にとっての悪条件がそろってしまいました.

それでも実習生はどんどん採集を続けます.あたらしい海藻を見つけては,採集してメモをとるの繰り返しです.

さすがに寒すぎて,岩陰に避難する場面も...

暖かいラボに戻ったら,採集した海藻の同定が始まります. 図鑑や採集時の解説を参考にして海藻の特徴を覚えてもらいます.

 同定が済んだ海藻は,ケント紙の上に広げて押し葉標本にします.乾燥するまで手間も時間もかかりますが,写真のカゴメノリやケイギスなどはとてもきれいな標本となります.標本としての価値ももちろんですが,実習の良い記念になるでしょう.

3日目は海藻の水平分布と垂直分布など,生態に関する講義から始まりました.午後からは実際にタイドプール内の分布状況を観察することになります.頭も体もフル活用.

 干潮までは時間があるので,ヒトエグサとアミジグサを使って表面観と断面観の観察をしてもらいました.

午後になり,いよいよタイドプール内の海藻分布調査が始まりました.調査するタイドプールの大きさや深さ,海面からの距離,方角など様々な要素によって生育する海藻の種類が変わってくるのです.

 タイドプールの海水を掻き出して,隅々まで調べます.選んだタイドプールの大きさや深さは体力の消耗率にも影響します....

タイドプールの内部に生えている海藻も調べます.昨日学んだ海藻の知識が早速役に立つ場面です.逆に,覚えていないとヒドイ目にあうでしょう....

ラボに戻ってからは,班ごとに発表用の資料作成です.性質の異なる2つのタイドプール間に見られる「違い」とその「理由」について考察していきます.


このようなタイドプールの平面図(写真)と断面図を用意し,発表にもちいます.どこにどのような種類が生育しているかが一目瞭然です.

その2に続きます.