瀬戸臨海実験所公式ブログ ‐ 地球の海と生命を科学する人々の日常。

Jun 20, 2016

祝!原村隆司先生 論文出版!

posted by AA


瀬戸臨海実験所特定助教の原村 隆司 (白眉プロジェクト)が、論文を出版されました。
おめでとうございます!

Crossland M. R., T. Haramura, & R. Shine (2016) Fejervarya sakishimensis (Sakishima Rice frog). Observation of a terrestrial beetle larvae (Family Caribidae) as a frog predator in Japan. Herpetological Review.47:107-108.

普通はカエルが昆虫を食べるのですが、これは逆に、昆虫を食べようとしたカエルに噛み付いて捕食するというゴミムシの仲間の観察例です。



Takashi Haramura  , Hirohiko Takeuchi , Michael R. Crossland , Richard Shine (2016) Resistance to an Alien Amphibian: Larval Competition between Japanese Frogs and Invasive Cane Toads
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0156396

http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0156396

外来種オオヒキガエル防除を、在来種で行なおうというものです。

Jun 8, 2016

第6回「神戸賞」の授賞式 「母娘協力して子育てを行うカニの研究」

第6回「神戸賞」の授賞式がホテルオークラ神戸で行われました。また記念講演会 「娘とともに子育てをするブロメリアガニの驚きの生態と進化の道筋」が、行われました。
(Speial thanks!  写真は須磨水族園から提供を受けました。)

 受賞者のRudolf Diesel博士は、海産、陸生のさまざまなカニ類の社会行動を研究し、珍しい生態を以下のように明らかにしてきました。

有名なブロメリアガニMetopaulias depressusはアカテガニに近いなかまで、陸生のカニであり、ジャマイカの固有種でブロメリアの葉の根元にある水たまりに、幼生を放ち育てます。育てるのは母カニですが、通常、1匹のメスのヘルパーがおり、これは母カニの最初のバッチのなかの一匹です。それが次からのバッチの子供を育てます。世話は、水たまりに落ちてくる葉やゴミを取り除く、幼生を食べにやってくるムカデやコオロギを撃退する、またそれらを捕まえてハサミでちぎり子ガニに与える、水が酸性にかたむかないようカタツムリの貝殻をいれて中和して中性を保つ、などです。

Diesel博士は、さらにカタツムリの貝殻にたまった水のなかで幼生を育てるカニSesarma jarvisiを発見しました。本種は陸生のカニで、アカテガニに近いなかまです。ジャマイカの森林地帯の石灰岩質の場所に生息します。ここに生息するカタツムリの貝殻にたまった水の中に、メスガニは幼生を放ち、およそ2〜3ヶ月もの長期間その貝殻と子ガニを守ります。これはブロメリアガニに次ぐ幼生とカニを母カニが守る種の発見でした。

また、Diesel博士は、潮間帯の上部にある岩のくぼみで子育てをするカニArmases miersiiを発見しています。これはジャマイカの海岸地帯に生息するアカテガニに近い仲間です。本種は岩礁潮間帯の上部にある水のたまった岩のくぼみに、メスガニは繰り返し繰り返し幼生を放ちます。この水たまりは、塩分濃度やpHや水温の変化が非常に激しいが、その幼生はそうした厳しい環境に適応した特殊なものです。

Diesel博士の研究で、若いころのものとして、彼を一躍有名にしたのはパトロールシステムとよばれる配偶様式をもつカニの発見です。これは浅海性のクモガニの一種Inachus phalangiumです。このカニのメスは大型のイソギンチャクに共生しています。一方オスは共生性でなく自由生活をしている。オスは、メスをその宿主のイソギンチャクごと防衛します。大型のオスは複数のメスとそのイソギンチャクを防衛し、その縄張りをいつもパトロールしています。

授賞式に先立ち、この神戸賞の設立者である須磨水族園の亀崎直樹氏より、賞の概要の説明がありました。


受賞理由が説明されます。


表彰式、表彰状の授与


記念トロフィーの授与


関係者による記念撮影

受賞記念講演。ブロメリアガニについてです。


受賞記念講演

皆さんで記念撮影


懇親会。司会は宮嶋彩さん





懇親会のようす



Jun 3, 2016

須磨水族園特別展「カニ研究クラブ」


 今年の神戸賞の受賞内容であるブロメリアガニにちなんで、カニに関する特別展が須磨水族園で開催されていました。
 この展示を作成した中心人物の一人は、須磨海浜水族園の宮嶋彩さんですが、この方は大学院生時代は瀬戸臨海実験所の教育拠点共同研究員として、フィールドワークをしていた方です。当時の所属は奈良女子大学大学院で、カニの行動、生態学で有名な和田恵次先生の薫陶を受けていました。

 この特別展の紹介については、須磨海浜水族園で下記のように紹介されていました。

「幼少の頃には川や海でのよき遊び相手であり、成長してからは美味しい食材としてなじみのあるカニですが、熱帯域から極地の海、森や川から深海まで、この地球上の多様な環境に適応しています。これらの環境に適応するため、彼らの姿形、生態も多様性に満ちた世界です。
 本特別展ではこの多様なカニたちの世界をご紹介するとともに、カニという生きものがどういった生きものなのかを学んで頂ける内容となっております。」


特別展会場の入り口です。

内容構成は下記のようになっています。
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●カニってどんないきもの?
 カニの進化や特徴など他の節足動物と比較しながら詳しく解説します。

●節足動物の口を比べてみよう
 カニ以外のヤドカリやカブトガニといった甲殻類の口をご覧いただけるように、下から見上げることができる水槽で展示します。

●色んな環境に適応したカニたちを展示。

●太古のカニ
 まるでオブジェのようなカニの美しい化石を展示。

●カニのへぇ(豆知識)
 思わず唸りたくなる豆知識をゲットしよう。

●カニダンスを踊ろう!
 これで君も干潟のカニダンスをマスターしよう。
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カニの付属肢を説明する展示です。 甲殻類は基本的に1つの体節に1対のY字型の付属肢がついたものが、連なった形をしています。これが進化のプロセスの中で、さまざまな形になり、触角、口器、はさみなどになっています。



ブロメリアの葉で子育てをするブロメリアガニの模型です。


 上記模型の拡大図です。一番大きいのが、母親のメスガニです。 その右にいるのが、母親が育てた最初の子供たちの中の1匹の娘カニです。 たくさん生まれた第一世代のうち、1匹だけが巣にとどまり、母親を助けるヘルパーとなります。この娘ガニは、この巣にとどまる限りは、性成熟が起きません。たくさんいる小さなカニは2年目以降に生まれた子供たちです。このカニは1年に1回しか繁殖しないので、同じサイズのものは、年齢が同じです。 
 カタツムリの殻がたくさん見えますが、これは母ガニが外から集めてきたものです。カタツムリの殻が水に溶けだし、子供カニにカルシウムを供給し、また酸性に傾きがちな水を中性に中和する働きをします。
 「複数世代の共存」「繁殖における分業(ヘルパーの娘カニが不妊)」「共同の子育て」を兼ね備えたものとして、原始的な「真社会性」と言えるかもしれません。子育てのある単なる「亜社会性」よるは、進んだ形の社会性をもっています。

ブロメリアガニの解説です。

生体展示もたくさんあります。 オカガニです。

さまざまなカニの生体展示があります。


マングローブの干潟も再現されています。 この中に、たくさんのミナミコメツキガニがいるそうですが、すべて砂の中でした。宮嶋さんによると、いわゆるミナミコメツキガニの行進が、さっぱり見られないそうです。

化石のカニも展示されていました。


 「和田恵次教授とおどろう」のコーナーもあります。 ヤマトオサガニ体操、アリアケガニ体操、コメツキガニ体操、チゴガニ体操などを、ビデオをみながら習得することができます。 まず和田先生が手本を示し、須磨水族園スタッフがそれに合わせて踊る、という構成になっています。先頭、中央にいるのが宮嶋さん。
 これを見て、きみも「ヤマトオサガニ体操」を習得しよう。(写真提供:須磨海浜水族園)


Special thanks: 本稿を草するにあたり展示情報の当ブログへの掲載を許可してくださった、須磨海浜水族園の亀崎直樹須磨海浜水族園学術研究統括部長、同水族園の中村清美さん、宮嶋彩さんに、深く感謝します。


「神戸賞」サイエンスカフェ「様々なカニの多様なくらし」


神戸市の須磨海浜水族園が主催する「神戸賞」の第6回の受賞者は、カニの行動学で知られるドイツのDr. Rudolf Dieselに決定しました。授賞式に先立ち、須磨海浜水族園 エントランスホールで、一般向けにDr. Rudolf Dieselの話を聞くサイエンスカフェ「様々なカニの多様なくらし」が開かれ、多数の参加者がありました。



Dr. Rudolf Diesel
 (High-Speed Camera Productions, ScienceMedia Film Productions)
(左は同時通訳の方です)

Rudolf Diesel氏は、Max-Planck-Institut für Verhaltensphysiologie (ドイツ)で海産のカニ類の個体群動態、繁殖システム、精子競争に関する研究を行い、1985年に博士号を取得しました。その後、Max-Planck-InstitutおよびUniversität Bielefeldでジャマイカに生息するアカテガニに近縁の陸生のカニ類の生態を研究しました。そのあと、University of Canterbury(NZ)、Max-Planck-Institutを経て、自然映像撮影会社ScienceMediaを設立しました。博士の撮った自然ドキュメンタリー映像や写真はドイツ国内メディアのみならず、BBC WildlifeやNational Geographic誌、NHKをはじめとする世界各国のメディアから配信されています。

ブロメリアの葉のみずたまりで子育てをするアカテガニに近いカニのブロメリアガニの研究は、つとに有名です。 さきごろNHKの番組でも、取り上げられました。











 今回の神戸賞のために特別に作られた陶器製のトロフィーです。左は、このトロフィーを作成した絵本・造形作家の、こしだミカさんです。ブロメリアと、その上についているブロメリアガニです。
 こしだミカさんの詳細は下記にあります。いろいろな絵本を出版したり各種造形の製作をされています。これまでの神戸賞のトロフィーも、この方の作になるものです。
 




 トロフィーを正面から見たところ。




トロフィーを上から見たところ。右側においてある小さな物体は、このブロメリアガニの子ガニで、オプションでついていて、その日の気分によって、すきなところに乗せられます。