瀬戸臨海実験所公式ブログ ‐ 地球の海と生命を科学する人々の日常。

Jan 30, 2016

齊藤康典さんのこと

posted by KM

年の瀬も押し迫った12月29日に筑波大下田臨海の齊藤康典さんの、突然の訃報がもたらされてから早一ヶ月が過ぎました。

私が齊藤さんに初めて会ったのは、齊藤さんがアメリカのホプキンス臨海実験所の研究員から下田臨海の講師として戻られた時で、当時私はM1の学生でした。齊藤さんとは年齢は14年程離れていますが、全くそれを感じさせない気さくな態度で最初から接していただき、少なくとも面と向かって齊藤先生と呼んだことは一度もありません。一昨年の段階で、齊藤さんが来年度で退官だと知って改めてびっくりした覚えがあります。
齊藤さんは群体ボヤの研究で有名な渡邊浩先生のお弟子さんで、当然群体ボヤは終生メインの研究材料でしたが、下田に戻られてからは様々な海産無脊椎動物に対象を広げられ、ご自身の研究ではカイメン、また学生と共に進められた研究ではギボシムシやヒラムシなどにも優れた業績があります。渡邊先生から伝えられたのであろう、かつての動物学が持っていた一徹さと、ホプキンスで身に付けられたのであろう、いい意味でアメリカナイズされた研究姿勢がうまいこと融合した、齊藤さんならではの研究を進められていただけに、65歳という若さでのご逝去は本当に残念でなりません。下田の現センター長の稲葉先生が、齊藤さんのカイメンの仕事による動物学会論文賞の祝賀の席で(齊藤さんご自身は体調不良で欠席でしたが)、この仕事は齊藤さんらしい、そして臨海らしい素晴らしい仕事だとおっしゃっていたのには、全く同感です。
また齊藤さんは渡邊門下生を中心とした下田OBの横の繋がりの場として、毎年年末に下田での「ホヤの忘年会」を主催されていました。私はホヤ研の出身では無いのですが、渡邊先生に修論の主査をしていただいた縁もあり、毎回お知らせをいただいておりました。齊藤さんは私が知る限りでも二年以上闘病生活を続けられていましたが、それでも昨年11月に行われた忘年会では、おそらくは抗がん剤の影響で随分とお痩せになっていましたが、自分で車を運転して渡邊先生を送迎されるなど安定したご様子だったので、それからわずか一ヶ月での訃報は余りにも突然で、31日に行われた告別式に向かう車中は大変つらいものでした。なおこの忘年会は、齊藤さんのお弟子さん達が密かに「退職記念祝賀会」を兼ねたものとして準備し、例年に無い大盛況の会となりました。実際の定年退職前の開催でしたが、結果としてぎりぎり間に合ったのは齊藤さんにとってもお弟子さん達にとっても、ある意味幸せなことだったかもしれません。
式場には年末にもかかわらず、渡邊先生はじめ多くの関係者が前日のお通夜も含めて各地から集い、齊藤さんを送り出しました。私も少しの時間ですがご遺族とお話が出来、様々なことが思い出されると共に、齊藤さんへの感謝の念を改めて強くしました。

帰路、新幹線の車中から仰ぎ見えた、大晦日の抜けるような青空の下の富士山の姿が大変印象的でした。


追記:齊藤さんの経歴や業績等については、下田臨海のサイトに設置された追悼ページをご覧下さい。

Jan 25, 2016

京大本学のラボとの合同ゼミ

瀬戸臨海実験所では昨年度より、京都にある京大本学の研究内容について関連するラボとの合同ゼミをスタートさせました。そのようすを報告します。


1回合同ゼミ

20141127日(木)
場所:京都大学農学部農学総合館
With
農学研究科 海洋生物増殖学分野
農学研究科 海洋生物環境学分野
フィールド科学教育研究センター 舞鶴水産実験所

小泉智弘(瀬戸臨海実験所) 「ハクセンシオマネキ(Uca lactea)の巣穴をめぐる雄間競争、および繁殖期の放浪雄増加」
山口真以(舞鶴水産実験所) 「マナマコは何故カキ殻を好むのか?」
大杉樹里(海洋生物増殖学分野) 「飼育下タラバガニ幼生にみられた形態異常と生残の関連性」
原田浩太朗(海洋生物環境学分野) 「日本海側の内湾における海底の富栄養化とマクロベントスへの影響」



第2回合同ゼミ


2015511
場所:京都大学理学部2号館
With
理学研究科 動物行動学研究室

中町 健 (瀬戸臨海実験所)「浅海生等脚類シリケンウミセミの生活史研究」
小長谷達郎(動物行動学)「単婚制の蝶類における無核精子の役割」
中山凌(瀬戸臨海実験所)「カサガイ類に見られる巻貝への付着の意義について」
伊藤真(動物行動学)「トノサマガエル属2種におけるメスの鳴き声は繁殖干渉を防ぐのか?






第3回合同ゼミ

20151124
場所:京都大学農学部農学総合館
With
農学研究科 海洋生物増殖学分野
農学研究科 海洋生物環境学分野
フィールド科学教育研究センター 舞鶴水産実験所

曽我部共生(海洋生物環境学)「丹後海舞鶴湾におけるスズキ仔稚魚の成育場の利用特性」
加賀谷勝史(瀬戸臨海実験所)「ばね駆動型運動の速度調節機構」
長縄秀俊(瀬戸臨海実験所) 「いまバイカル湖の沿岸生態系で起こっていること」
山崎哲也(舞鶴水産実験所)「丹後海の底生動物群集」
東海林 明(海洋生物増殖学)「アバチャン(クサウオ科)の分類学的・系統地理学的研究」


写真提供:鈴木啓太(京都大学舞鶴水産実験所)©



写真提供:鈴木啓太(京都大学舞鶴水産実験所)©






Jan 13, 2016

祝! 中山真理子さん 論文出版!


posted by AA


瀬戸臨海実験所は平成23年度より教育関係共同利用拠点(事業名:黒潮海域における海洋生物の自然史科学に関するフィールド教育共同利用拠点)として文部科学省から認定され、各種共同利用事業を進めています。 この教育拠点共同研究員として、当実験所をフィールドワークの拠点として活用されていた中山真理子さん(当時 奈良女子大学)が、論文を発表されました。

おめでとうございます!

中山真理子さんは、干潟の稀少オサガニ類チゴイワガニの生活史を研究されていました。
 チゴイワガニIlyograpsus nodulosus(Sakai, 1983)はオサガニ科に属する日本固有種で、記録される地域は西日本の一部に限られており、準絶滅危惧種とされています。本研究では、和歌山県田辺市新庄町内之浦の泥干潟下縁部で年間を通した採集により、定期的にチゴイワガニの野外集団の構造を追跡することで、繁殖、成長、寿命、性比、体サイズの性的二型などを明らかにしました。また、野外で採集した個体を室内の水槽で観察することにより、摂餌行動、造穴行動、配偶行動、闘争行動などの特徴を明らかにしました。
  また配偶行動や闘争行動の室内実験より、複数雄間での雌をめぐっての競争では、雄の体サイズは必ずしも 有効ではなく、これが本種の雌に偏った体サイズの性的2型と関連していることを示しました。


Nakayama, M., & Wada, K. (2015). Effect of size on fighting and mating in a brachyuran crab with female-biased size dimoprohism, Ilyograpsus nodulosus (Macrophthalmidae). Journal of Crustacean Biology, 35(6), 763-767, 2015.
 http://booksandjournals.brillonline.com/content/journals/10.1163/1937240x-00002380


Nakayama, M. & Wada, K. (2015) Life history and behavior of a rare brackish-water crab, Ilyograpsus nodulosus (Sakai, 1983) (Macrophthalmidae). Crustacean Research, 44: 11-19.
  https://www.jstage.jst.go.jp/browse/crustacea

Jan 2, 2016

祝! 加賀谷勝史先生 論文出版

posted by AA


 瀬戸臨海実験所連携助教の加賀谷勝史先生が、論文を出版されました。おめでとうございます!

 甲殻類のシャコは、スシネタとしても有名ですが、付属肢を高速で運動させることによって二枚貝などの固いものを割って食べます。加賀谷先生は、この高速運動に着目してそのメカニズムの研究を行っています。
 一度シャコが運動を始めてしまったら、その動きは速すぎてリアルタイムでのコントロールはできません。今回の研究で、加賀谷先生はPatek博士との共同研究で、シャコが外骨格バネ圧縮を伸展筋によって変化させることで、パンチ速度を「運動開始前」に調節していることを示したました。今後、シャコがなぜ速度調節をするのか、シャコに秘められた捕食行動の戦略性とそれを支える学習能力の研究展開が期待されるます。

Feed-forward motor control of ultrafast, ballistic movements
K. Kagaya, S. N. Patek
Journal of Experimental Biology  2015

DOI: 10.1242/jeb.130518

URL: http://jeb.biologists.org/content/early/2015/12/04/jeb.130518


 シャコの高速パンチの様子が下記にアップロードされています。
    https://youtu.be/47AYYrFjRJE


この論文の内容の概要は下記です。

筋肉の限界を克服するために、バネやラッチの利用によって超高速かつ高パワーの運動が実現される。数ミリ秒での運動では、典型的な神経・筋系での運動調節が実時間で行われることは不可能であるため、超高速運動は調節がなされることがないか、「運動前」に調節される。本研究では、シャコ(口脚類 Neogonodactylus bredini)で、超高速運動が調節されるのか、また、そうであれば運動前にどのように制御されるのか調査した。ハイスピード撮影を行うと同時に、バネ圧縮とラッチ開放を制御する伸展筋と屈曲筋からの筋電図を記録した。スマッシュ動作は屈曲筋活動が停止した数ミリ秒後に開始した。これは屈曲筋がバネ開放を妨げ、動作開始タイミングを決定していることを示す。線型混合モデルと赤池情報量基準を用いて、制御機構に関する複数の仮説を検討した。バネ圧縮とパンチ角速度の変動が、伸展筋運動ニューロンの活動で説明されることが判明した。この結果は、シャコが運動学的に変化のあるパンチを生み出せることを示しており、そのキネマティクスが運動開始前の運動ニューロン活動によって変更されること、さらには、超高速運動が上流の中枢神経系に基づいた制御仮説を支持する。これらといくつかの知見に基づいて、我々は生物学における弾道的運動制御の代替仮説群として「鹿威し」モデルを提示する。シャコにおけるフィード・フォワード制御の発見は、超高速運動における運動対象の評価、戦略的な運動変化、学習の役割についての研究を展開するための舞台を提供すると言える。


  

謹賀新年

明けましておめでとうございます。
本年の皆様のご多幸をお祈り申し上げます。

朝倉彰 (京都大学瀬戸臨海実験所)


Happy New Year!
I wish you a year filled with peace,good health and happiness.

Akira Asakura (Seto Marine Biological Laboratory, Kyoto University)



Photo: Hiroyuki Tachikawa.  Design: KS Nemoto