瀬戸臨海実験所公式ブログ ‐ 地球の海と生命を科学する人々の日常。

Mar 25, 2013

祝! 吉田隆太さん論文発表:瀬戸実験所近隣の海から新種発見

posted by AA

昨年の春に瀬戸実験所に訪れて、近隣の磯での採集調査や瀬戸実験所で文献調査をされ、また実験所の院生の皆さんに対してのセミナー(ヤドカリにつくフクロムシ)をしていただいた吉田隆太さん(琉球大学)が、 論文を発表されました。

Yoshida R, Hirose M, Hirose E (2013) A new peltogastrid rhizocephalan parasitising a hermit crab from the Japanese coast: a second species of Dipterosaccus Van Kampen & Boschma, 1925 (Crustacea: Cirripedia).  Systematic Parasitology 84:137–147.

これはサンゴヤドカリに寄生するナガフクロムシの新種記載の論文で、Dipterosaccus shiinoiといいますが、なんとホロタイプは瀬戸実験所の近隣の磯で採集されたもので、したがってType localityは「白浜町沖」です。まったく名誉なことです!
論文は詳細な外部形態の記載、切片の観察、ミトコンドリアDNAのCO1遺伝子からみた実に緻密な研究で、これからの記載論文の手本になるような素晴らしいものです。
白浜町長に連絡して新聞発表しようかしら!?

Mar 22, 2013

大垣俊一さんを偲ぶ

posted by AAsakura

瀬戸臨海実験所で大学院生時代を過ごし、その後いくつかの職を経験して、またこちらに戻ってきて、長きにわたって主として岩礁潮間帯のベントスの研究を続けておられた大垣俊一さんがお亡くなりになって、 この5月で1年になろうしている。大垣さんはある場所にわたる長期の生物相の変動について、その生態学的重要性を認識され、実に根気強く、チームで調査を続けられておられたが、そのこころざし半ばにして無念にも病に倒れられた。
 しかし先日の瀬戸臨海実験所の教職員の会議で、わが実験所として大垣さんのご遺志を継ぎ、その長期的研究をこの実験所の若手職員を中心として、続けることになった。30年来の知り合いである私としては、これは大きな喜びであるであるとともに、この調査を続けることに手を挙げてくれたこの実験所の若手の人たちに深く感謝したい。


ありし日の大垣さん(左)。岩礁潮間帯のマクロベントスの調査をチームで行っているところ
私が大垣さんと初めてお会いしたのは、大垣さんが瀬戸臨海実験所の博士課程の院生として研究をしておられた時であった。当時は私は九州大学の天草臨海実験所の修士課程の院生であった。その時、瀬戸実験所で海洋ベントスの談話会が開かれ、それで瀬戸を訪れたのであった。当時は天草も瀬戸も院生がたくさんいて、非常に賑やかに研究をしたり議論をしたりしていた。もともと両実験所は研究内容としては良く似ている、いわば兄弟のような実験所である。しかしそれも考えてみればそのはず、京都大学の森下正明先生が一時、九州大学に来られて教鞭をとっておられたころのお弟子さんが、のちに天草臨海実験所の所長になられた菊池泰二先生であったわけで、言ってみれば、九大は京大の流れを組んでいるという背景があったのである。
 私は当時の瀬戸実験所の院生の口が立つことに驚いたものであり、時にその口は毒舌、辛辣に感じたものである。そういう中にあって、大垣さんはもの静かなジェントルマンであり、学問に対する真摯な姿勢が印象的であった。しかしまた同時にその信念は強いものを感じた。
 大垣さんが私のことをどう思われていたかは今となってはわからないが、私から見ると、学問に対する姿勢、話のテンポや内容は、かなり波長が合っていたように思う。
 当時は大垣さんは瀬戸実験所近くの磯でタマキビ類の生態を研究されていて、潮汐のリズムとタマキビ類の行動の関係を調べておられ、そのフィールドにも案内していただいたが、実に几帳面にデータをとっておられるのにひたすら感心した。その後、大垣さんは小笠原諸島の父島や沖縄にも行かれ、タマキビ類の分布調査などをされていた。そして結局、そこから出発して生涯を磯の貝類を中心としたマクロベントスの生態の研究に捧げることになるわけであるが、いかにも大垣さんらしい一途な生き方である。
 
  大垣さんはもちろん研究者志望であったが、どういう理由かは聞かなかったが、ある時からは研究職の公募などには出しておられなかったようで、塾などで生計をたてながら独自の道を進まれていた。
 大垣さんとは。学会などで時々顔を合わせたり、ときには電話で、ときには年賀状のやりとり
の中で、情報を交換していたが、次第に学会で顔をお見かけすることが少なくなっていったように思う。

 しかしなんという偶然か、昨年の1 月から私が大垣さんの地元である瀬戸実験所に勤務することになり、その時にご挨拶のe-mail を大垣さんに差し上げた。すると大垣さんからすぐに「春になって気候が良くなったら瀬戸実験所にお伺いします」というご返事をいただいた。私は旧交を温めることを楽しみにしていたのだが、その時まさか大垣さんが重篤な病気に罹られているとは夢にも思っていなかった。したがって、その訃報はまさに寝耳に水のことであった。
  大垣さんは几帳面な方であったので、健康面も十分気をつかっておられたと思うのであるが、病というのは、なぜかそういう人にとりついてしまい、わからないものである。

  大垣さんの生涯というのは、まさに学究の徒というのにふさわしく、岩礁潮間帯の生物の研究に捧げられた。特に非常に長期間にわたるモニタリングを通しての、各種マクロベントスの変動を追い続けた研究の功績は高く評価されるであろうし、世界的にみても、同じ場所でこれだけ長く継続観察された例はまれである。

 
 
大垣さん、
 

 大垣さんの岩礁潮間帯の長期研究に関するご遺志は、わが瀬戸臨海実験所として正式に継ぐこととなりました。これまでたくさんのことを教えていただき、本当に有難うございました。どうぞ、安らかにお眠りください。

 
 
 

  合掌。

追記:大垣俊一さんの追悼文集は関西海洋生物談話会アルゴノータArgonauta 21(2012)http://www.mus-nh.city.osaka.jp/iso/argo/に掲載されていますので、ぜひお読みください。また上記の文の一部も、私自身の追悼文を引用している部分があります。


 

Mar 21, 2013

公開臨海実習「藻類の系統と進化」

posted by marikok

3月15~20日に、公開臨海実習「藻類の系統と進化」が行われました。 この実習では、春に実験所周辺で繁茂する海藻を観察します。被子植物の「海草」と海浜植物も観察対象でした。

[海藻の押し葉標本作製]
まず実験所周辺の番所崎を一周して、どの海藻がどんな場所に生育しているかを鰺坂先生(農学研究科)が一通り解説しました。海岸で海藻の色、形、手触り(ときには味も)を観察し、押し葉標本にするために一部採集して、図鑑で詳しく調べます。この日だけで47種の海藻を確認することができました。



[タイドプール調査]
次はタイドプールの海藻の分布を調べる実習です。タイドプールの大きさ、深さ、海からの距離、方角、それから海藻食のウニ類の分布など、海藻分布には種ごとに様々な環境が関係しています。現場で同定作業を行い、それぞれの海藻の水平・鉛直分布を絵に描いて記録します。実験室に帰って、海藻の分布に環境の違いがどのように影響するかを考察して発表しました。

[漂着したアマモの解説]
畠島では、野口先生 (理学研究科) による海草・海浜植物の解説がありました。畠島のある田辺湾にはアマモという海草が生育していますが、運良く、花をつけている個体が漂着しているのを発見しました。アマモの祖先は陸上植物ですが、その花は私たちが目にする陸上植物のものとは全く異なる形態をしており、水中生活への適応がみられます。花は持ち帰って顕微鏡で観察しました。

[トベラの形態変異調査]
また、畠島には人の手がほとんど入っていないため、海浜植物の自然な植生をみることができます。たとえば、トベラという種では、生育環境によって形態が大きく変異していることが観察されました。実習生の解析結果から、風あたりや日照などが葉の大きさや乾燥耐性に影響していると考えられました。



フィールド調査によって、植物の分布と物理的環境の密接な関係を考察することは、植物の生態を理解する上で重要な作業です。実験所周辺の自然を活かした、とても興味深い実習でした。

Mar 20, 2013

海産無脊椎動物分子系統学実習 中野

こんばんは、中野です。元帥だとか何だかと呼ばれてるようですが、決して怪しい実習ではありません。おおよその内容は、これまでの3人の記事で伝わったと思いますので、 前日までの準備や、ふじもんのふりに応えるような内容で書こうと思います。

分子実習ではいろいろな事を学ばないといけないので、必然とレジメや参考資料の量も多くなります。
参考資料を提供いただいた東大の伊勢さん、岡西君ありがとうございました。

実験所内には分子実験室がありますが、人数が多いので、いつもの実習室へ機材を運び込みます。

実験で使用するサンプルも先に採集し、エタノールで固定しておきます。

 今季の実習生が採集したサンプルは来季の実習生が使うことになります。
使い捨てのチップやチューブを滅菌しておきます。

消毒用のエタノールを入れるためのボトルも買ってきました。

まるでうん○です。のちにうん○の神様と呼ばれるようになります。

シチュエーションによってはこんなにも神々しくなります(実習生談)。
 リハーサルもこなしたのに、予想外のことがちらほらと。

ふじもんがびっくりしているのは…。

手袋がLサイズではあいません(汗)

白衣もSで合わない!?ちっちゃい子が…。
実習自体は非常に充実しており、打ち上げ開始まで通常通りです。
朝倉所長のあいさつと乾杯でスタートです。
イカのリクエストが入り、刺身を作ったり…、
何だか質問攻めにあったり…、
岡西研究員も笑いすぎて、写真もブレブレです。
気配が変わったのは、ここからです。

黄色い先生、登場です。このために北大からはるばる来てくださいました。

(いえいえ、ちゃんと研究のためです、念のため)。

ぐおー。くんかくんか。

はぁ、めっちゃいい匂いする。(女子学生悶絶!?)
なんでか、みんなに匂われるはめに。あぁ、岡西研究員とふじもんまで。

黄色い先生、もだえる。

こんな感じで、夜も更け、朝日が昇ってきました…。

最終日にはサプライズで色紙のプレゼントが。

私も貰いました。みんな、ありがとう。

円月島の前で、集合写真を撮りました。

ポースは、実習中に編み出されたカサゴのポーズです。




実習が終わる前から、「同窓会したいね」という声が聞こえるほどの、仲の良さでした。9月には夏の公開臨海実習がありますので、そこで再会しましょうね^^

ちなみに岡西研究員の撮影した写真は、実習初日から打ち上げ開始までで 1,500枚、打ち上げ中に1,500枚の合計3,000枚です。

posted by Tomo




Mar 19, 2013

海産無脊椎動物分子系統学実習 藤本


INVERTEBRATIZE!!
どうも学生の藤本です。
全国津々浦々から集った選ばれし戦士たち(*)の参加した「海産無脊椎動物分子系統学実習」のTAを務めさせていただきました。
*募集定員オーバーで選抜が行われました。

クマムシ以外に観察した小さい生き物(左,腹毛動物;右,動吻動物)。

さすが選ばれし戦士たち、誰一人として脱落することなく最後まで鬼軍曹殿の厳しい訓練を耐え抜き、分子系統学的解析という技術をきちんと身につけ、それぞれの大学に帰っていきました。

ところで、私はこの実習で驚くべき光景を目の当たりにしてしまいました。

最終日全ての訓練が終了した後、中野分子系統学元帥が、戦士たちから色紙を贈呈されたのです!!
私はこれまで数多くの臨海実習のTAを務めさせていただきましたが、このような光景を目にするのは初めて。色紙をもらうなんて滅多にないことです。

いったいこの実習で何か特別なことはあったのか?

これを検証することで、この珍しい現象の原因を明らかにできると思いますので、お付き合い下さい。

私が実習に加わっていたときは普通でした。私が実習にいなかったのは、「1.潮岬方面に戦士たちが遠征した日」と私が途中で帰った「2.実習打ち上げ」。はたしてこの二つのイベントで何か特別なことがあったのか?それぞれ見ていきたいと思います。

謎1.潮岬方面に戦士たちが遠征した日

資料として残っていた写真を見る限り

写真1A.???怪しい実に怪しい触れてはいけない気がするので、これ以上の詮索はやめときます。こういう人たまにいますよね。

写真1B.ん?!これは!!って男子は?!え~~~!!
たいへん興味深い。いままでの実習にないことです。

謎2.実習打ち上げ

この部分に関して資料の多くが非公開となっており、その全貌を明らかにすることができません。打ち上げで私が帰るまでに目撃し、公開されているものの中で最も重要なものは以下になります。

この写真と写真1B、共通した現象が見受けられます。そしてこれは過去の実習でみられなかったことでもあります。どうやら色紙贈呈の原因はここらへんにありそうです。

しかし酔っぱらった私の不確かな記憶によると、打ち上げはこのあともっとすごいことになっていたようなあれなんで鬼軍曹殿はこのことに触れなかったのだろう
(Posted by 藤本)

Mar 15, 2013

海産無脊椎動物分子系統学実習 岡西

研究員のMokanishiです。3/2から3/9にかけて、海産無脊椎動物分子系統学実習が行われました。

自ら野外で採取した無脊椎動物のDNAの抽出とPCRによる特定部位の増幅、およびその配列データを系統学的に解析してもらおうというものです。

一週間強という決して長くない期間で立派な系統解析ソルジャーになってもらなりません。私も心を鬼軍曹にして分子実験経験の少ない学生たちにハードな訓練を課しました。その八日間にわたる激闘の記録をご覧ください。

~3月2日~

全国津々浦々から12名の戦士たちが集いました。
到着当日の夜から実習準備です!
まずは今後の相棒となる白衣のサイズ合わせ。

ゴム手袋を装着。
近接型DNA混合兵器「ピペットマン」の使い方を体に刻み込んでもらいます。

~3月3日

いよいよ実習開始っっ!!!
まずは今回の解析ターゲット(今回はカサガイ、イボニシ、ウニ)
の解剖、および組織の採取です。

ウニの組織を取り出し中。
解剖中にとげが勢いよく飛んでくるため、
防御用特殊ゴーグルが欠かせません。
早くも自然が牙をむきます。

 中野分子系統学元帥によるカサガイの解剖のデモンストレーション。
一歩間違うとDNAは採れません。
みな真剣です!

 覚えたてのピペット操作。慎重に薬品を注入していきます。
一瞬の油断がコンタミ*を招きます
見えない敵との戦いに常に集中力が要求されます。
*他の生物のDNAが試料に混入する事

 「元帥、お願いいたします!」
重要試薬の注入は元帥自ら行います。
緊張の瞬間です。

いよいよPCR!
祈りを込め、サーマルサイクラーにDNAと試薬の混合液をセットします。 
ここで失敗すれば居残り実験もあり得ます。

PCR中の空き時間は休憩かって?
とんでもない!!
論文読みに決まってるじゃないですか!
甘えは許されません。 

~3月4日~

電気泳動が終了。PCRの結果は…?
この日、成功者と敗北者がきっかりと分かれました。
しかし研究の世界は非情なのです。
容赦なくシーケンス解読に外注しました。 

~3月5日~

外注の結果待ちの間は、みっちり先生方による講義です。
遊びではないのです。
ソルジャー達の頭は無脊椎動物に洗脳されていきます。 

~3月6日~

たまたま北大から標本調査にいらっしゃっていた柁原教官の虫」講義
「蠕虫」(ぜんちゅう)とは、細長く足のない生き物の総称です。

~3月7日~

この日は野外にでました。
絶好のお出かけ日和です。

しかしながら!

このころにはもはや完全にInvertebratize*
されたソルジャーたちの目に魚など映ろうはずがありません。
無心で海産無脊椎動物を追うのです。

*他動詞:「骨抜きにする、海産無脊椎動物研究者化する」の意。
今回の実習で生まれた新英単語です。

本州最南端の潮岬で束の間の休息。
物思いにふける元帥の背中。
今後の実習の行く末を見据えます。

 那智の滝につきました。
これはさすがに観こ馬鹿を言うんじゃない。

この石段です!
そう、実験は体力から!
この石段を登り降りして体力増強を図る
地獄の野外プログラムですよ!! 

帰ってきても研修は続きます。
夜遅くまでプランクトンの観察です。
そう、戦士たちに休む暇などないのだ…。

~3月8日~

 ついにシーケンスデータが返ってきました。
「これは読めている…のか?」
実験とは、完全にうまくいっていることの方が少ないものです。

夜遅くまで準備に勤しむソルジャー達。明日は発表会なのです。
本実習の集大成を発表するのです!
発表することに意義がある?いいえ、

失敗は許されません。

夜食です。宮崎総統お手製のパスタが、疲れ切った学生たちの心を癒します。 

よほど疲れたのでしょう。満腹になったソルジャーが一人また一人と倒れていきます。

そんな死屍累々の中、異彩を放つソルジャーが一人。
京都大学が生んだ鬼才、M西君です。
観察中に死んでしまった貝をハンマーで割って食べようという、
驚嘆すべきサバイバル力を発揮しています。
エースとしての自覚と責任が、彼の内なる魂を目覚めさせたようです。
*貝はきちんと下ゆで処理しています

~最終日(Xデイ)~

最後の準備に勤しむ学生たち。
一睡もしていない学生もちらほら。
果たしてその努力の成果は…? 

トップバッターはカサガイの分子系統です。
元帥のご専門。うまく説明できるか!? 

イボニシ(巻貝)の分子系統です。
今回最もPCRの成功率が低く、発表が危ぶまれましたが、
なんとかうまくまとめてくれました。 

最後はナガウニ類の分子系統です。
散々やりつくされた分野かと思っていましたが、
面白そうな発見もありました。
今後につながる成果です。 

質疑応答の一コマ。矢のような質問にも臆することなく、堂々と応答します。
見違えるように成長しました! 

いよいよ中野元帥の最後のお言葉です。
みな、この一週間の訓練を思い返していることでしょう。
血と汗と涙に彩られた厳しい実習によく耐えました。 

最後の集合写真。
実習(訓練)から解放された学生たちの顔に、笑顔が灯りました。

今後、系統解析ソルジャーの卵たちは各地に戻り得た技術を後世に伝えていってくれることでしょう。決して楽な一週間ではなかったかもしれませんが、その経験がやがて芽を出し、実を結ぶことをスタッフ一同願っています。

報告は以上です…


















…しかし…。



















これで本当に全てでしょうか?何かを忘れているような気がするのです。私は、本当に私は厳しい訓練を課せたのでしょうか?

私は…。私は…ウッ!!!頭がッ!!!

(posted by Mokanishi the General)