瀬戸臨海実験所公式ブログ ‐ 地球の海と生命を科学する人々の日常。

Nov 17, 2017

京大臨海実習第3部・公開臨海実習「藻類と海浜植物の系統と進化」(20170314-19)その1

posted by TPS

既に夏が終わり,季節はすっかり秋になってしまいましたが,せとブロは今年の3月に行われた実習について投稿していきます.遅くなってごめんなさい.そろそろ来年3月の実習への参加募集が始まります.この記事が参考になりますように.

3/14-19の日程で,京大理学部「臨海実習第3部」・公開臨海実習「藻類と海浜植物の系統と進化」が行われました.例年は受講者が多いこの実習ですが,今年は6人のみで実施しました.

初日はオリエンテーションとして,自己紹介からスタートです.6人しかいないので,1人あたりちょっと長めの紹介をしてもらいました.

自己紹介の後は所内の見学です.写真の角度が良かったのか,とっても広くてキレイな廊下に見えますね.いや,実際広くてキレイですヨ.

この実習を担当してくださる福井県大の神谷先生から,海藻についての基本的な講義を受けて初日は終了です.これくらいの規模の講義も,距離が近くていいですね.

2日目は藻類の世代交代についての講義からスタートです.海藻の多くは、染色体数が半分になる配偶体と2倍体になる胞子体の間で世代交代を行います.

前日に採集しておいたアオサから何やら緑色の靄が出てきました.それを顕微鏡で観察してみましょう.

ガラスボールの縁にたまった緑色の部分です.それを拡大すると右の写真のようになります.これは遊走子といって鞭毛をつかって泳ぐことができます.遊走子が岩場や網に着底すると,新しいアオサへと成長していきます.

次に藻類の切片を作っていきます.神谷先生の熟練の技をご覧ください.


実習生もキレイな切片を作るべく,何度もチャレンジしていました.もちろん観察とスケッチも必要です.

うまくいくと,こんな切片が観察できます.1層の細胞が見事に観察できました.1層ということは...,そう,アレですね.是非実習で体験してください(宣伝).

午後からは海岸で実物を採集・観察しました.実験所の眼前には,干潮時になると広大なタイドプールが出現します.

足下には,このような色とりどりの海藻が繁茂していました.左はハナフノリとフクロフノリ,右はカゴメノリとみなさんおなじみのヒジキです.

ところでみんなが厚手のカッパを着込んでいることに気づきましたか?そうです,この日は気温が低いうえに風が強く,雨も降りだす始末です.野外採集にとっての悪条件がそろってしまいました.

それでも実習生はどんどん採集を続けます.あたらしい海藻を見つけては,採集してメモをとるの繰り返しです.

さすがに寒すぎて,岩陰に避難する場面も...

暖かいラボに戻ったら,採集した海藻の同定が始まります. 図鑑や採集時の解説を参考にして海藻の特徴を覚えてもらいます.

 同定が済んだ海藻は,ケント紙の上に広げて押し葉標本にします.乾燥するまで手間も時間もかかりますが,写真のカゴメノリやケイギスなどはとてもきれいな標本となります.標本としての価値ももちろんですが,実習の良い記念になるでしょう.

3日目は海藻の水平分布と垂直分布など,生態に関する講義から始まりました.午後からは実際にタイドプール内の分布状況を観察することになります.頭も体もフル活用.

 干潮までは時間があるので,ヒトエグサとアミジグサを使って表面観と断面観の観察をしてもらいました.

午後になり,いよいよタイドプール内の海藻分布調査が始まりました.調査するタイドプールの大きさや深さ,海面からの距離,方角など様々な要素によって生育する海藻の種類が変わってくるのです.

 タイドプールの海水を掻き出して,隅々まで調べます.選んだタイドプールの大きさや深さは体力の消耗率にも影響します....

タイドプールの内部に生えている海藻も調べます.昨日学んだ海藻の知識が早速役に立つ場面です.逆に,覚えていないとヒドイ目にあうでしょう....

ラボに戻ってからは,班ごとに発表用の資料作成です.性質の異なる2つのタイドプール間に見られる「違い」とその「理由」について考察していきます.


このようなタイドプールの平面図(写真)と断面図を用意し,発表にもちいます.どこにどのような種類が生育しているかが一目瞭然です.

その2に続きます.

Oct 12, 2017

公開臨海実習「海産無脊椎動物分子系統学実習」 (2017 2/25-3/4)

Posted by TPS

やっとブログが今年に追いつきました....来年に受講を希望する方にとって参考になりますように.

2/25-3/4まで,海産無脊椎動物分子系統学実習が行われました.この実習では,実験所周辺で採集された軟体動物・棘皮動物・甲殻類そしてプランクトンをもちいて,DNA抽出からPCR,系統解析までの分子実験の一通りを体験できます.最終日には実習で得られた研究成果の発表もあります.

まずは自己紹介から.今回は7名の精鋭が分子実験に挑みます.

オリエンテーションの後から実習がスタートです.まずは朝倉先生による分類学についての講義が始まりました.

初日ではありますが,この日は夜の部もありました.夜はマイクロピペットの操作方法やチューブの扱い方を練習します.

この実習では白衣がユニフォームです.気分的にも盛り上がります...よね?

初心者も経験者もいましたが,みんなでチューブの蓋の締め方からマイクロピペットによる分注までを練習しました.

この実習では,ほぼ全編にわたって「白衣の人間が何か作業をしている」写真が続きます.手抜きではありませんよ,ちゃんと別の作業をしているんです....


2日目はいよいよDNA抽出作業からスタートです.まずはエタノールで固定された標本から組織を切り出してもらいましょう.こちらのテーブルではウニから始める模様です.

今回の実習では,特定助教の加賀谷先生も分子実験に飛び入り参加です.ウニを解剖して殻の内側に位置している瓶嚢(びんのう)を抽出に使います.

ウニを解剖した人ならわかるはず.そう,瓶嚢とは管足の基部にある袋状の器官ですよね.

切り出した組織をチューブに入れていきます.初めてやる場合にはなかなか緊張する作業です.

各種のbufferを注ぎ,高速遠心機にかけていきます.写真が代わり映えしないので割愛!

DNA抽出がおわったら,いよいよPCRで目的の領域を増幅していきます.

やはり代わり映えしないので,実習室全体の雰囲気をお伝えしましょう.こんな感じで白衣の集団は実験を進めていきます.

PCRが終わるまでの待ち時間に,電気泳動用のゲルを作成しておきます.適量を混ぜてレンジでチンするだけの作業ですが,みんな真剣です.

出来上がったゲルをトレイに流し込み,固まるまで30分待ちます.気泡が入らないように注意しましょう.やってる内容は,ほぼ料理と一緒です.適量を適切にまぜるだけ.

ゲルが固まったら,PCRの結果を確認するために電気泳動を行います.みなさん左手人差し指の使い方が様になっていますね.

DNAの増幅を確認したら,PCR産物を精製して塩基配列の決定を業者に発注します.何の事やらわからないという方は,是非実習に参加してみてください(うっすらと宣伝).

この日の残り時間は,解析用ソフトのインストールやデータベースから塩基配列をダウンロードする方法を体験して終了です.

外注したシーケンスデータが帰ってくるまでは2日ほど時間がかかります.その間に,実習で扱っている生き物の生息環境を実際に観察してもらい,来年の実習で使用するサンプルの採集をしてもらいました.

まずは実験所近くの番所崎でウニの採集をしました.ナガウニは全タイプゲットできたでしょうか?

干潟近くの水門では,ケフサイソガニやイボニシの採集をしました.

写真のように石をひっくり返すと,その下にはカニさんが隠れています.まだ寒いので,活動が活発ではありません.採集のチャンスです.

さらにプランクトンの採集にも挑戦してもらいました.プランクトンネットの投げ方が板についています.写真の撮り方も...(自慢)



ラボに戻ったら,早速観察の開始です.写真のように海水を冷やすことで,プランクトンの動きを鈍くし観察しやすくしています.

今回の実習ではオキクラゲのエフィラと定番のオタマボヤが見つかりました.もちろん他にもたくさんのプランクトンが観察できますよ.

翌日には採集してきた生物の同定と標本作成を行いました.ここでも「白浜の海岸生物観察ガイド」は大活躍です(宣伝).

かなり大量のウニですが,7人もいればあっという間に同定できるでしょう.

貝の標本は,このように一度茹でて身を取り出し(肉抜き),肉片の一部はDNA解析用にエタノール固定,残りは形態観察用にホルマリン固定,殻は乾燥させてやはり形態観察に使用します.

肉抜きは貝の種類によって最適な茹で時間などがある奥の深い世界です.今回の実習生はとても器用に標本を作成できたようです.

この日の午後は,外注していたシーケンスが届いたので,ソフトの使い方を学びつつ系統解析に挑戦です.

実習6日目は,5つの講義がつづく座学デーです.朝から昼過ぎまで,内容の濃い講義のオンパレードです.

連続の講義を生き残った実習生達は,あすの研究発表の準備に余念がありません.

解析の方法や系統樹の解釈など,みんなで少しずつアイデアを出しながら進めているようです.もちろん研究の考察は,自分の力でまとめます.

もういっその事,7人全員で取り組みましょう.文殊の知恵より2倍以上効率アップ...かも.

この日は実習中最後の夜なので,まだ明日の研究発表は残っていますが打ち上げパーティーです.参加者にとっては、明日に備えて気持ち控えめの打ち上げだったかもしれませんね。

実習も最終日を迎えて、いよいよ研究発表が始まります。今回は7人で4つのテーマについて発表してもらいます。

発表の内容は割愛しますが(来年も同じテーマを扱うので…)、みなさん良い発表をしていたと思います。

 彼は一人でナガウニの多様性について発表してくれました。

こちらは採集された「謎」のプランクトンを分子同定してくれました。

そしてこちらのチームは,ケフサイソガニとタカノケフサイソガニの違いを分子データで検証してくれました。

発表を終えた解放感がにじみ出た一枚です.8日間お疲れ様でした.